Wellbrook社 ALA330Sの設置と使用


■ ALA330Sとは...
イギリスのWellbrook CommunicationsがALA1530に続いて2001年末にリリースしたALA330の改良版で、2003年10月に発売されました。元になったALA330は、その型式とおり短波帯の3MHzから30MHzをカバーするアクティブループアンテナで、中波帯の強力な電波からの悪影響を抑制する仕様になっていました。今回の改良は、ゲインの増加、電源ラインから回り込むノイズの抑制、相互変調の抑制とのことです。実売2年でのマイナーチェンジを配慮してか、ALA330Sはアップグレード用と称してユニットのみの販売にも応じているようです。私は今回がはじめての購入でしたので、ALA330S完成品での購入を検討しました。

■ Wellbrook社のAndy氏よりALA330Sの情報を得たのは2003年9月早々で、ALA1530よりも9dBゲインが多いらしいことがわかりました。しかし使用下限周波数が3MHzでは中波帯で使えないのかも知れないという不安がありお尋ねしたところ、性能の低下はあるものの150KHzから使えるとの回答がありました。型番のテールレターに"S"と付加されるからには、まだナニかあるのだろうと突っ込みを入れてみましたら、次のことが判明しました。Sバージョンの主目的はゲインの9dBアップにあるようです。しかし、そのままでは相互変調による悪影響が懸念されるので、アンプユニットの改良でそれを実現させたようです。ALA1530やALA100でも「S化」される計画があれば、それまで待つのも良いかと思いましたが、残念ながら今回の「S化」はALA330Sのみでした。「S化」に伴う新旧の比較は下表のとおりです。

  ALA330 ALA330S
利得   ALA1530よりも9dB増加
大きさ φ1.10m φ0.94m
IP2 +70dBm +80dBm
IP3 +40dBm +43dBm
価格 £119.95 £189.95
室内ユニット ALA1530と共通品 ALA330S専用に型起こし

■ 実は使用していたALA1530には、それなりに満足していましたが、もう少しゲインがほしかったのと、中波、短波のローバンドでおばけが出るというところでこのALA330Sのスペックにはとてもそそられるものがありました。このHPのBBSで共同購入を募ったところ瑠璃さんが手を上げてくださいましたので、一緒に個人輸入することにしました。見積もりをとって、クレジットカード決済のため、SW Shopを通しての発注となりました。10月1日に発注して、いつもは受注確認後3週間くらいで届くのが、今回は二人とも全然配達されません。さすがに心配になって問い合わせてみたら、ALA1530のオーダーが滅茶苦茶集中していてそちらにかかりっきりだと言う事でした。それからしばらくして瑠璃さんのところに、ついで私のところにも11月8日に配達がありました。瑠璃さんによるインプレはこちらです。

■ 届いたばかりのALA330S。ウレタンフォームで巻かれていますが、円形ループアンテナそのまんまの形です。郵便局より配達されました。
■ ループアンテナにくっついているカタマリは、直下型ユニットと屋内ユニット、同軸ケーブル等の付属品です。たぶん、無理やり1個口にすることで、運送費を安く押さえるのと、付属品が空輸中に行方不明になるのを防ぐ目的があると思われます。緩衝材の隙間から中のユニットが見え隠れしているのは不安ですが、もしかしたら税関検査の跡かもしれません。まとめて5セット以上購入した場合には、各パーツに分解して送られ、受取人がアンテナを組み立てることになるようです。その分、運送費は安くなるようですが...
■ 大きさは事前に直径94cmとメールで教えてもらいました。一体いつから94cmになったのか不明ですが、想像するに梱包後寸法が1m未満に収まっていることから、これまた運送費を抑える目的があったのではないでしょうか。シルバーグレーの物体は輸送中にアンテナを保護しているウレタンの緩衝チューブです。
■ ALA330Sの「ヘッドユニット」を裏から見たところ。シリアルナンバーはここと、室内の「アンテナインターフェイス」にも書かれています。私の固体ではS/N:1016でした。S/Nは試作機、評価機から付けられているため、販売時はゼロスタートではなく1009番からと聞いています。
■ 同じくヘッドユニットを横から見たところ。この銘板シールには「ALA330S」とは書かれていません。たぶん他の機種との共通の銘板シールなのでしょう。ループ導体を保持する両袖上部にボルトが写っています。試していませんが、このボルトによりアンテナ部とヘッドユニットが脱着できる構造のようです。アップグレードと称するキットを購入して、ループ部を自己調達する場合、パイプの寸法さえ合わせれば比較的簡単にオリジナルサイズのALAが作れるのかもしれません。
■ 付属品一式です。ALA330SのコネクタはBNCで、自作用に2個(同軸ケーブルの両端)コネクタが付属していました。黒い円形シートはヘッドユニットの裏側に付ける防振ラバーロート状の金物はヘッドユニットの下部に取り付けてアンテナポールとジョイントさせる使い方もできます。黒いビニールキャップは同軸コネクタ部の防水カバー、プラグは電源コード用です。
■ ヘッドユニットにマストブラケットを取り付けるためには一度写真のように天板を取り外します。この時、ヘッドユニットの中を見るチャンスがありますが、中には黒色の樹脂が封入されていて残念ながら部品や結線は見られません。天板を元に戻して、付属の長いボルトでふたを閉めます(最初に取り外したボルトは不要になります)。裏から見るとこんな感じです。JACOM製のマストブラケット(取付金具)を仮取り付けした状態です。実はこの取付金具の向きはどちら向きにもできますが、この写真の向きですと、アンテナに対してダンゴの串刺し状の固定が可能で、逆向きですとマストが同軸コネクタ部に当たるため、アンテナ下部での固定のみとなります。実際の作業ではヘッドユニットに取付金具を先に取り付けますと、同軸コネクタの防水加工ができなくなりますので、先に同軸ケーブルの接続をします。防水加工は、市販の自己融着テープで同軸コネクタと同軸ケーブルを重ね巻きします。さらに自己融着テープの上からビニールテープを巻きつけて完成です
■ アンテナマストには金属製のポールでも深刻な影響はありませんが、今回は宇部日東化成株式会社製のコンポーズパイプを使用しました。規格は外径52mm、全長5.3mです。しかしこのパイプですと太すぎてJACOM製の取付金具が使えないので、取付金具の穴を開けなおしました
■ アンテナ柱は共聴用の8mポールを、下から1.5m根入れして建ててあるものを使います。2連スライダー梯子を立て掛けて作業をしようとしましたが、円柱に対して上部で立て掛けるだけでは不安定で、とても危ないのでポールに沿わせ、地面に垂直に立て掛けてハシゴの各段でバインド線で固定して登りました。季節風の少ない時を狙って少しずつ作業を進めやっと完成させました。マストは全長5.3mの内、約2.5mをポールと重ね、最下部をエモトのローテータで受け、ポールの最上部でエモトのマストベアリングで支えています。

■ 同軸ケーブルはALA330Sのヘッドユニットから5D-FBを20m引き伸ばし、ローテータケーブルも同様に20m引き伸ばし、シャックまでの足りない長さをそれぞれ別々の場所で継ぎ足すことになりました。同軸ケーブルは10D-2Eの中古品がありましたので、M-Mの中継コネクタで接続しました。ローテータケーブルはシャックまでの経路の途中に位置する電力/電話等の引き込み柱の基部に防水ボックスを設けて、その内部で6芯を閉端接続子で圧着しました。この引き込み柱から先は家人が往来する場所ですので、地面を10cm程度掘り下げて各ケーブルを地中埋設としました。6芯ローテータケーブルはちょっと頼り無さそうなので、電工用のフレキチューブに通して保護しました。左の写真はワイヤーを使って通線しているところです。
■ 室内のアンテナインターフェイスは、ALA1530用のものと較べると一回り大きなサイズです。現在までのところ、Wellbrook社ではこの大きなユニットはALA330Sにのみ採用しているようですが、今後この新しいタイプに順次換装されるものと思われます。両者の違いは通電状態が視認できるように赤色LEDが付いたこと、ACアダプターからのノイズを抑制するために多分ノイズフィルターを強化したことです。アンテナインターフェイスの裏側にもシリアル番号が書かれていました。アンテナの方位は室内からローテータを回転させて合わせています。
■ さて、気になるアンテナの性能ですが、最初にALA1530とのSメータの振れ具合の比較をしてみました。
  ALA1530 ALA330S
40KHz S=7(-77dBm) S=5(-90dBm)
189KHz S=8(-70dBm) S=4(-95dBm)
558kHz S=9(-60dBm) S=7(-83dBm)
729kHz S=9+40(-27dBm) S=9+25(-43dBm)
1053kHz S=9+35(-33dBm) S=9+25(-43dBm)
1332kHz S=9+40(-30dBm) S=9+25(-43dBm)
1548kHz S=8(-75dBm) S=7(-80dBm)
2310kHz S=4(-102dBm) S=5(-95dBm)
3925kHz S=9+10(-60dBm) S=9+30(-35dBm)
6055kHz S=9+20(-50dBm) S=9+30(-35dBm)
10.000MHz S=9(-70dBm) S=9+5(-65dBm)
11.500MHz S=6(-90dBm) S=6(-90dBm)
15.410MHz S=8(-75dBm) S=8(-75dBm)
17.870MHz S=7(-80dBm) S=7(-80dBm)
受信機:WJ HF-1000A、PREAMP=off、4/3 23:00〜23:30JST
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