ALA1530の誕生

Wellbrook Communication社(以下Wellbrook社)はAndrew Ikin氏(以下、Andy氏)が1996年に創業したベンチャー企業で、最初に製造したのはアンテナバランUMB130でした。 このバランは、それまでの高価なRF SystemsMLBに較べてノイズが少ないという特長がありました。
ALA1530は小さな庭でも設置できる高性能アンテナとして着想され、ローノイズ・アクティブアンテナの基礎実験に4年を費やした後、1996年10月に開発され、1997年5月に販売を開始しました。2001年には適用下限周波数が150KHzだったのを50KHzまで下げました。 2002年末にはゲインを3dB増加させる一方、消費電流を120mAから100mAに減らしました。 2003年1月にシエスタさんが確認したところ、日本へはJACOM経由で約60本販売したようです。将来の計画として、電源ラインからの雑音を阻止する能力の改善や、新しく60cm径のセミリジット屋内ループを出すことを検討しています。
 2003年2月末、長波帯の利得を向上させました。
 2003年2月末、相互変調特性を向上させました。
 2003年3月末、間島さんに納品のS/NはALA1530-20**とのことでした。
 2003年3月21日、Wellbrook社からLA5030リリース。
  2003年4月6日、LA5030は屋外でも使用可能だがALA1530と較べると
   やや利得は少ない。ループ内部にワイヤーとポリエチレンを充填して
   作られており、それ故"semi-rigit"と表現したとのこと。(Tnx Andy-san)
  2003年7月、Tさんが導入され、ブルーのループがとても鮮やかでした。
  2003年8月、Wellbrook社のホームページで、LA5030を抱えている少年は
    Andyさんの息子さんではなくて、そのWebを製作した人の息子さんでは
    ないかと思う、とのAndyさんの談話がありました。
 2003年10月、Wellbrook社から短波帯の感度をALA1530よりも約9dB増加した
   ALA330Sがリリース予定。大きさは他のWellbrook社のループアンテナと同じ
   直径94cmなのですが、特筆すべきはIP2+80dB、IP3+43dBとのことです。
   シリアルナンバーは試作機、評価機を含めて採番している関係上、S/N1009
   からのスタートで、価格はこれまでの同社ループアンテナ中で最高値の本体
   GBP189、送料GBP25です。同アンテナのレビューはPassport to World Band
   Radio 2004年版に掲載される予定です。

ALA1530の特徴

ALA1530はよく勘違いされますが、シールデッドループではありません。 従来の受信用途ループアンテナの先入観では考えられない、直径約1mの極太(19mm)アルミパイプを使用しています。このアルミパイプをシールド材として、本来のループアンテナ導線が パイプの中に巻きこまれていると言うことはありません。 アルミパイプによる1回巻ループアンテナと考えるべきです。 ALA1530ではループ部に誘起された受信波を同調操作すること無しに、 平衡回路のままpush-pull増幅しています。このpush-pullアンプはCATV用のバイポーラ・トランジスタと推測され、そのゲインは数10dBあると思われますが、ゲインは公表されていません。 アンテナ部から室内電源供給部までは両端BNCコネクタの同軸ケーブルを使用します。 Wellbrook社では最長RG58Cで100mまでと同社ホームページに掲載しています。 屋内ユニットには受信機接続用に約1mのMコネクタ付き同軸ケーブルが付属しています。 またALA1530には中波では顕著な指向性があります。この指向性は、ゲイン最大のフロントは非常にブロードで、ゲイン最小のサイドは逆にシャープです。 逆に言えば少々方位が違っていても受信感度には大差はありません。このアンテナに適した使用方法は、ノイズや混信局をNullと呼ばれる感度最小点に追い込む方法です。このため中波メインに使用されるのであれば、アンテナを回転させるためにローテータが必要になります。
ALA1530の設置

ALA1530は軽量かつ受風面積も小さいので、TV/FM用途の小型ローテータで十分に回転させられます。 この場合、タワーにローテータをセットしなくても、アンテナマストとALA1530の中間にジョイントを兼ねてローテータをセットすればよいでしょう。
別途ローテータケーブルが必要になりますので、使用機種に合わせて調達する必要があります。おおむね3芯から 7芯くらいの仕様が多いようです。ハムショップやヤフオクにはローテータ用ケーブルとして出ていますので、入手はさほど難しくはありません。

ローテータの一例

ALA1530はループアンテナの特徴として金属がループ導体に接触したり、接近したりすることで影響を受けることがあります。そのためアンテナマストにはグラスファイバーポールや竹竿が使われます。しかしながら、影響を受ける程度はさほど重大ではありませんので、あまり神経質になることもありません。またポールにループを固定するのには、仮設の場合はテープやインシュロックタイ、長期使用の場合はデベマウントなどが適していると思われます。

グラスファイバー工研
商品名:スーパーフィールドポール
38Φ 1m \1,900
38Φ 2m \3,800
38Φ 4m \7,600

デベマウントとグラスポール

この時も、デベマウントのUボルトがループ導体に直接接触しないように、両者を絶縁できれば良いでしょう。納品時にループ導体を保護しているウレタンがありますので、それを適宜カットして使えばクッションが効いたよい絶縁が可能になります。固定で使用する場合、鳥が好んでとまりますので、糞害を避けるためにインシュロックタイなどをループ部に密に巻き付ければある程度は防ぐことができます。 一度高いところに上げてしまいますと、おいそれとは手直しができませんので、事前にできるだけ対処することが必要です。

商品名:デベマウント
38×32mm DM3832 ¥1,800

デベマウント使用例

同軸ケーブルRG58Cの100mの減衰量は10MHzで約4.8dBとされ、およそSメーター1〜2目盛りに相当します。 同軸ケーブルは中・短波ではさほど減衰しませんが、細いケーブルを長く引き回すことは種々の弊害のため好ましくはありません。 BNCコネクタは一般には3D-**,5D-**用です。日本における輸入代理店JACOMではオプションとしてコネクタ付き同軸ケーブルを販売していますが、長距離引き回す場合には注意が必要です。

JACOMでの取り扱い同軸ケーブル
3D2V 5m 2,900円 (BNCコネクター付き)
3D2V10m 3.600円 (BNCコネクター付き)
3D2V15m 4,300円 (BNCコネクター付き)
3D2V20m 5,000円 (BNCコネクター付き)

なお変換コネクタを利用すれば、中間は太い同軸ケーブルを使用することが可能ですが、この場合変換ロスや接触不良、防水対策には注意が必要です。アンテナ側BNCコネクタ接続部は特に防水構造にはなっていません。そのため、ユーザー自身がこの部分の防水を完璧にしておかなければなりません。防水対策は、市販の自己融着テープを下地に巻き、その上からビニールテープをしっかりと重ね巻きします。またローテータや家屋のエッジで擦れる箇所にはあらかじめ保護処理をしておきます。

防水処理の様子

室内ユニットにはACアダプタを接続します。英国からの個人輸入やJACOMから オプション無しで購入するとACアダプタは付属されませんので注意して下さい。 またユーザー個人で用意するときには、後々変なノイズに悩まされないように ACアダプタ自体がノイズを出さないことは当然のこと、ノイズ耐性のあるものを 選ばなければなりません。 JACOMで用意されるオプションのACアダプタは、もともと健康イオン発生空気清浄機のACアダプタのようです。これを選定した理由は定かではありませんが、 少なくともACアダプタによる弊害は見聞きしていませんので問題はないかと思います。同様のACアダプタはジャンク屋の店頭で新品箱無品ではありますが 数百円で売られていますので、参考にされて下さい。 分配器や切り換え器、ノイズキャンセラー、プリセレクタなどを使用する場合には屋内ユニットと受信機の間に配置して下さい。

JACOMからALA1530用「AC電源アダプター 2,000円」として購入したものです。

 

同じものがジャンク屋の店頭に山積みされていました。こちらは1個300円です。品物は両者ともクリアベール専用ACアダプターMODEL:KNAC001Jと書かれています。クリアベールとは(株)カンキョーの空気清浄機の商品名です。JACOM販売品をよく見ると、+−を書き直した痕跡があります。またJACOM販売品のプラグがストレート型なのに対して、本来の品物はL型になっています。これは後述しますが、ALA1530旧型の屋内ユニット電源部はセンター(+)なのです。それで極性を反転させるためにこのような改造を行なったと想像されます。



新旧のACアダプタ
7/14 瑠璃さんから掲示板「どんむあん亭」に投稿していただきました写真です。現在は右側の黒いACアダプタがJACOMより出荷されています。

ALA1530のトラブル

全部の接続を確認したら実際に受信してみます。 配線が正しければ、良好な受信状態が得られます。 もし、全バンドに渡って著しく感度が悪い場合は、以下のところを確認して下さい。 ACアダプタを抜き差しします。受信感度が悪いまま変化無ければ、電源が供給されていません。その時にはテスター等でACアダプターの出力電圧が約12V出ていることを 確認します。出ていなければ交換して下さい。電圧が出ていたら、プラス/マイナスの極性をお確かめ下さい。 ALA1530の屋内ユニットは製造年代によって、ソケットのプラス/マイナスが逆になっていますので注意が必要です。まれには、屋内ユニットやACアダプタの極性の表示が違っていることも ありますので、原因が分からないときには思い出して下さい。 ついで屋内ユニットのソケットで接触不良が有ることも見聞きしました。ソケットとプラグのほんの僅かな径の誤差が原因です。ソケット内部の板バネを少し引き起こしてもいいでしょう。 電源系に問題が無いときには、同軸ケーブルを確認します。 屋内ユニットから受信機接続用に出ている1mの同軸ケーブルは時々「いも半田」が あります。 屋外のアンテナ部から屋内ユニットまでの同軸ケーブルは設置時にオープン/ショートを 確認しておくと2度手間になりません。特に途中で同軸ケーブルを継ぎ足したりする場合は注意が必要です。 ALA1530を設置したのに室内ノイズを拾う場合は、アンテナの設置場所に注意して 下さい。Wellbrook社では家屋もしくはノイズ発生源から6m離すように勧めていますが、日本の平均的環境では厳しいものがあります。 仮設置をしたら室内のインバーター機器やパソコン、ルーターの電源ON/OFFで受信ノイズに変化がないかを確認して下さい。 経験的には、平面距離で6m離すよりも、垂直距離で離す方が効果的です。 それでもノイズが切れないときには、ローテータがあればそれで、無ければ 手動(手モテータ)で回転させ、ノイズ変化を確認して下さい。 もしノイズに変化がみられたら、最良の位置で固定すればよいでしょう。

屋内ユニット
写真上は現行型のユニットで、写真下は旧型のユニットです。拡大写真は両者の違いである外部電源の差込口の極性プリントです。ユニットの左側面はアンテナからの同軸ケーブルを接続するBNCコネクタ、右側面は受信機に接続するMコネクタ付きの同軸ケーブルです。上面はヒューズホルダーと外部電源のソケットです。



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